小坂森林鉄道研究会では森林鉄道で使用された小型ディーゼル機関車や客車、貨車を保存しています。
残念ながら研究会が設立された時点で小坂森林鉄道を走っていた機関車は残っておらず、貨車が少量残っているだけでした。
そこで御嶽山を挟んで隣同士で、同じくヒノキの産地である木曽の森林鉄道の機関車や客車、運材貨車、小坂で使われていた木製トロリー(トロッコ)をひめしゃがの湯で展示しています。
小坂森林鉄道は木曽から来た技手や業者が敷設工事に携わり、木曽の森林鉄道から機関車の貸し出しや運転手の応援を頂いたこともありました。お互いの線路も県境を挟んで数kmの範囲まで近接し、同じ御嶽山を囲むヒノキ林に関わる森林鉄道の車両ということで弊会にて保存しています。
4.1tディーゼル機関車No.33(静態保存) 
1935(昭和10)年酒井工作所製で、No.118と同じく王滝・小川森林鉄道で使われました。
内燃機関の国産技術が未熟な時代に製造された機関車で、当初はアメリカ製のガソリンエンジンを搭載、昭和30年頃に新三菱重工業(現・三菱重工業)のディーゼルエンジンKE-21に載せ替えています。
第二次世界大戦中には木炭ガスをガソリンの代わりに使用してガソリンエンジンを動かす代燃機関車となっており、今でもガスパイプの取り付け跡が残ります。三菱が財閥解体で分社化されていた頃の燃料噴射ポンプやエンジンが使われていることなど森林鉄道機関車としてだけでなく、昭和史を現在に伝える貴重な産業遺産です。
王滝営林署で使用後は王滝村の民間木材企業に払い下げられ引き続き王滝森林鉄道で昭和40年代まで使われ、廃車後は岐阜、愛知県内で静態保存されていました。
5tディーゼル機関車No.118(動態保存) 
1957(昭和32)年酒井工作所製で、王滝・小川森林鉄道で使われました。
高度経済成長期の生まれで、前面は大きな2枚窓にモデルチェンジして明るい印象です。
昭和30年代は小川森林鉄道の支線(現在赤沢自然休養林がある辺り)で木材の搬出に使用され、昭和40年代は中山道の景勝地「木曽の桟」の対岸にあった王滝森林鉄道桟停車場に配置され、貨車入換を行っていました。
王滝森林鉄道廃止後は滋賀県のドライブイン、長野県の野辺山SLランドで動態保存され、2019(令和元)年にひめしゃがの湯へやって来ました。2021(令和3)年に昭和30年代の上松営林署時代の色に塗装しました。
5tディーゼル機関車6-10-5(動態保存) 
1995(平成7)年3月北陸重機工業製で、国土交通省立山砂防事務所の立山砂防軌道で使われました。
森林鉄道ではなく立山カルデラの砂防工事の資材や人員輸送に使用されました。
新しい機関車で、列車の現在位置把握のための無線設備やGPSなど装備も現代的です。2021(令和3)年3月にひめしゃがの湯へやって来ました。ご老体のNo.118を助けます。
B型客車王営No.7(静態保存) 
両端に運材台車を使用したB型客車と呼ばれ、王滝森林鉄道の王滝営林署管内で作業員輸送などに使用されました。王滝営林署所属の7番目ということで王営No.7という番号が付いていました。
B型客車は車体の長短、外板の方向が縦横などバリエーションが多く、王営No.7は小型の横板タイプです。
B型客車王営No.16(動態保存) 
車体が失われ台車だけの状態で小坂入りし、運材台車として展示しています。
木材を載せる転向台にトラック用の戸田式ステッキを載せています。
豆トロ(動態保存) 
小坂森林鉄道で使用された木製の小型トロッコ。軸受にボールベアリングが採用されていることから比較的新しいものと見られ、車輪には岩崎レール、軸受にはSATOの陽刻があります。
豆トロは営林署の木材、木炭輸送から地元住民の農具や収穫物の輸送まで幅広く使われました。
この車は小坂森林鉄道廃止後かつての線路端に残されていましたが、木部が腐っていたため研究会で交換、復元したものです。